静かなるわが妹、君見れば、
想
すずろぐ。
朽葉色
に
晩秋
の夢深き君が
額
に、
天人
の
瞳
なす空色の君がまなこに、
憧るるわが胸は、苔古りし
花苑
の奥、
淡白き吹上
の水のごと、空へ走りぬ。

マラルメの詩が難解と言われるのは、一つには完璧に韻を踏むために文章の語順を入れ替えてあるためです。読み手はよほど注意深くないと主語がどれか、動詞がどの主語を受けているのか、副詞や形容詞が何を修飾しているのか、こんがらがって迷ってしまうことが多いのです。
22歳頃の作とされるマラルメの代表作の一つで、完成度の頂点を極めているこの「といき」、どうせ難しいからと敬遠する青年も多いようですが、私ぐらいの年齢になれば、忍耐力もそれなりについていますので、鑑賞に適しているかも知れません。マラルメが亡くなったのは1898年、56歳でした。今回、日本語訳をざっと探して、3人の訳者の訳詩を読み比べてみますと、原文を忠実に追っているが、描写されている情景がよく見えないものと、多少の解釈を足してよく整理されているものとがあるのがわかりました。私個人としては、上田敏の訳が、情景がすっきり理解できて率直に味わうことができました。文語を使っていますが、難しい言葉はなく、恋人の枯れ葉色のひたいと、水色の目をみつめていると、心がすがすがしくなり、彼女にあこがれる視線は青い秋の空へ、噴水の水がためいきをつきつつ吹き上がるように昇っていく、と歌っているわけです。マラルメのもう一つの名高い愛の詩「あらはれ」はファースト・キスの夢み心地を歌っていますが、「といき」のほうは、愛の経過としてはもう少し手前の段階とでも言えるでしょうか。
初々しく、清らかで、マラルメが詩王であるとされるのもなるほどと思わされます。全体で10行の詩で、後半の5行では、夕日の光が池の水面を黄色に染めて、十月の澄んだ空と物憂い調和を作り出しています。
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