俳句のページ

有働薫の詩人のラブレター

◎詩人のラブレター47

私はあなたを深く愛していた。

「もはや手の打ちようはない」――この宣言を何につけ十八番にしてきたことだけが、私の残忍さだった。

私たちは許しあえたのだろうか。


 


ミッシェル・ドゥギーは1930年パリ生れ、2010年の今年で御年80歳ですが、詩人としての活動はいよいよ充実してきているようです。パリ第八大学のフランス文学の教授を経て、1983年にジャック・デリダによって半官半民の研究教育機関国際哲学コレージュがパリのデカルト通りに創設されると、この市民に開放された哲学学術交流アソシエーションの議長をずっとつとめてきました。詩風は哲学的で「思考詩」とも呼ばれていますが、作品に当ってみると、愛の詩も意外に多く、柔軟で明快です。これまで20冊ほどの詩集が出版され、そのうち、妻の死を追悼した『終わることなきものへ』(1995)には《トレーヌ(挽歌)》という副題がついており、古代ギリシャのホメロス時代に葬式で踊りと共に歌われた詩の形式を意識していることがわかります。上に引用した数行はこの詩集からの抜粋です。愛する者を失った直後の悲しみと自責の感情が死者への問いかけとして表現されており、さらに読み進めばこの喪の経過のなかの自己を逐一正面から受け止める率直さに心を打たれ、このやや近づき難く思われる詩人への接近を許してくれます。この詩集は『尽き果てることなきものへ――喪をめぐる省察』のタイトルで梅木達郎訳(松籟社、2000)で読むことができます。ドゥギーは2001年5月に来日し、学習院大学ほかで講演しました。学習院大学では「詩学と修辞学」と題して行われました。今年3月、「詩人たちの春2010」の催しのために再び来日され、東京日仏学院では「詩は孤独ではない」というタイトルで吉増剛造氏と共に朗読と講演をされる予定です。


有働 薫(うどう・かおる)
1939年東京杉並生れ。第1詩集『冬の集積』(詩学社)、第2詩集『ウラン体操』(ふらんす堂)ほか。 モルポワ訳詩集は、『夢みる詩人の手のひらのなかで』(ふらんす堂)、『エモンド』(ふらんす堂)、『青の物語』(思潮社)。
自費出版のご案内出版刊行案内ふらんす堂友の会オンラインショップ
俳句のページ詩のページ句会のページ投句のコーナーeBOOK
イベント ブログ 各種お問い合わせ 主な取扱い書店 HOME