わたしの好きなアルコール


川口晴美

 もともとお酒は弱い。だから今みたいにほぼ毎日アルコールを摂取する生活をするようになるなんて、まったくの予想外だった。中高生の頃にお酒を飲む行為に憧れた記憶はなく、20代の頃もおいしいとは思わなかったし、ビールをコップに一杯がやっとだったのだから、人生は思いがけない。いや、今だって量は飲めないのだ(だから二日酔いにさえならない)。それなのに一日の終わりにアルコールが欲しくなるのは、10年くらい前からだろうか。考え事や辛い気持ちでかたくなっている心身を、ゆるくほどいて眠らせるのにちょうどよくて飲んでいるうちに、おいしさに目覚めたのであ る。ビールやワインを選んだときもあったけれど、この頃は強いお酒を少しだけ飲むのが気に入っている(ラム酒の銘柄はずいぶん覚えた)。あるいはコーヒーリキュールのように甘いお酒。甘やかされている気分になれて楽しい。ゆらゆら酔って、えへへとイミなく微笑みながらだらしなく眠りにつくような大人になれたことが、実はわりと気に入っている。