私の好きな「古今亭菊之丞」


薦田 愛

 なで肩に着物が似合う。若いのに不思議な色気が漂う。落ち着いている。そして巧い。
噺家である。色なら「甕覗き」、あるいは「兆し」とでも言いたいほど密やかな気配を湛える。それはもう「様子がいい」といった表現でしか表せない何かだ。名前は入門の折、役者にしたいようだ、と師匠がつけたとか。
 三十そこそこで真打、というだけでは真価が伝わらない。何人か同時に昇進し、披露目の賑わいも負担も分かち合うことが多いらしい世界で、ただひとり真打に上った。
 すべての定席の意見が揃った上でのことだと聞く。耳目も一身に集まるが、重責も半端ではなかったろう。以来、定席に加え、独演を含めた少人数の会もたびたび開く。
 さらに待つ人、招く人のいる巷へと、洋服姿になれば昔の高校生にも見紛う清潔感につつまれ出かけてゆく。意外に野太い声で描く田舎侍、まなざしも婀娜な芸者や女将、そして幇間――「たッぷりと!」のかけ声が少しも惜しくない人だ。