《十一月十二日》鷹渡る仮面の村の眼を射抜く

いままでたくさんの人を傷つけてきたと思う。思い出すたびに胸が苦しくなるけれどもうどうしようもない。やり直すことも、帳消しにすることもできない。せめてこれからは、頭を低くして生きていこう。人間の品性とは人格の研鑽によるのではなく、きっと反省や後悔の堆積なのだと思う。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 11月13日:毒茸や太郎うっとり毒の恋
  • 11月12日:鷹渡る仮面の村の眼を射抜く
  • 11月11日:鵙啼いて銅の太陽落ちにけり
  • 11月10日:地虫鳴く色の祈りを掘り起こす
  • 11月9日:秋鰹叫ぶかたちのまま死せり
  • 11月8日:流れ星ななつの棘を落としてく
  • 11月7日:木賊刈るメトロノームの狂ひかな
  • 11月6日:金の罅もつゐのししが泣いてゐる
  • 11月5日:夜の鞍星のにおいがまだ残る
  • 11月4日:鳥兜むらさきの雨ねぢれ降る
  • 11月3日:山葡萄くすりともせず熟れにけり
  • 11月2日:鰡の群れ太鼓の胴を泳ぎゆく
  • 11月1日:秋の象うすうくうすうく風を舐め

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