《六月二日》口紅の先はなぞへに杜若

――写生してて、五七が出てきてあとの五がスッと出てこず、後になってあれこれ首を傾げてそこを埋めたり――(「青」一九八三年二月号)

とここまで言われれば、「そうそう」と頷いてしまう。爽波に言わせれば「お話にならんということ」です。

言葉が五七五の塊として反射的に出て来ることが肝要ということ。頭でわかってもなかなか反応できない。

●季語=杜若(夏)

著者略歴

山口昭男(やまぐち・あきお)

1955年兵庫県生まれ。波多野爽波、田中裕明に師事。 「秋草」主宰。句集に『書信』『讀本』『木簡』(第69回読売文学賞) 『礫』、著書に『言葉の力を鍛える俳句の授業―ワンランク上の俳句を目指して』『シリーズ自句自解Ⅱ ベスト100 山口昭男』『波多野爽波の百句』がある。日本文藝家協会会員

 

 

 

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バックナンバー

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  • 6月19日:昨日より水のつめたき桜桃忌
  • 6月19日:パレスチナのオリーブオイルにズッキーニの黄とゴーヤの緑いためて
  • 6月18日:串の鮎翁のやうに口噤む
  • 6月17日:水裏返しては藻刈進みゆく
  • 6月16日:棟上の扇子がそこに草を刈る
  • 6月15日:萍の水を見せずに広がりぬ
  • 6月14日:旅に文書けば水馬ふえてゐる
  • 6月13日:金封の大きな〆や源五郎
  • 6月12日:餉のあとのすぐのまどろみ遠浮巣
  • 6月11日:つんつんと杉菜つきだす螢籠
  • 6月10日:螢火を見飽きて闇を見てゐたり
  • 6月9日:アマリリス大きな返事してほしい
  • 6月8日:さくらんぼ食べて貧乏ゆすりかな
  • 6月7日:雨蛙両脚ずらしつつ動く
  • 6月6日:洗はれて仏壇もどる牛蛙
  • 6月5日:仕方なく鈴蘭の花褒めにけり
  • 6月4日:この鯰水が軽いと言うてをり
  • 6月3日:さみだれをしきつめてゆく湖水かな
  • 6月2日:口紅の先はなぞへに杜若
  • 6月1日:六月や白き柱の浮御堂

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