《三月四日》道子・京二されきすともされき継ぐあらたまはあり坂口恭平

道子・京二の遺志を全く思いがけないかたちで継ぐのは、彼らと同じく熊本に住む半世紀以上も若い坂口恭平か。面喰いの道子は恭平の見舞をことのほか愉しみにしていた、という。

著者略歴

高橋睦郎(たかはし・むつお)

昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。 詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。 歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)

 

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  • 3月11日:さすらひの原初に置かむすさのをぞ哭きいさち日を暗めすさびぬ
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  • 3月8日:走り飛ぶもののみならず土深く根づけるものもされく枝葉もて
  • 3月7日:地にけもの空に虫鳥 海に魚いのちといふはされきさるくを
  • 3月6日:彼されき我さるき死ぬるまでされき死にせむのちもさるき倒さむ
  • 3月5日:恭平のされくは歌ひ描き書き土を耕へし海に糸垂る
  • 3月4日:道子・京二されき亡すともされき継ぐ新魂はあり坂口恭平
  • 3月3日:思ひきや木乃伊さびする道子乗せ押しし京二もされき亡すとは
  • 3月2日:木乃伊さぶ道子乗せたる車椅子押しされきけり渡辺京二
  • 3月1日:されきびと石牟礼道子されされて木乃伊さびすや車椅子の上

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