《十二月十日》蜜柑むくみんなの手から夜がこぼれる

夏の光は性格が強い。太くて押しが強くて、肌に勝手にぶつかってきては跳ね返っていく。こっちの準備なんて一切おかまいなしに、ガッガッと存在感を押しつけてくる。一方で冬の光は、まるで別の生き物みたいに静か。歩いていると、そっと身に寄り添って、気がつけばポケットの中まで薄く明るくしている。冬の光は、たぶん話のわかる光だ。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 12月10日:蜜柑むくみんなの手から夜がこぼれる
  • 12月9日:短日やバターたっぷりのごほうび
  • 12月8日:炬燵から出ずに謝る午後三時
  • 12月7日:寒昴みづのゆらぎの底までも
  • 12月6日:ねずみもちひとは名づけるのが上手
  • 12月5日:冬の波ちょっと小走りになる夕
  • 12月4日:扉絵のごとき静けさ冬の家
  • 12月3日:枯蔦のくるんとしたとこ好きになる
  • 12月2日:落葉ふわっと乗っかってくる上目づかい
  • 12月1日:狐火が遠くて今日の皿が割れ

俳句結社紹介

Twitter