《十月十九日》むかごほどまどろんでゐる女かな

小学校長時代、毎年全学年で俳句の授業をしてきた。時間が許せは、句会や短冊書きも行った。ある年の子供の作品。

一年――冬の空みんないっしょにかお上げる

二年――木の下で犬のしっぽがさむがった

三年――友だちがもみじのことを言っている

四年――息の色何もかもが白い冬

五年――どうしよう人参とりに行こうかな

六年――秋風は人の背中を押す風さ

楽しい時間だった。

●季語=零余子(秋)

著者略歴

山口昭男(やまぐち・あきお)

1955年兵庫県生まれ。波多野爽波、田中裕明に師事。 「秋草」主宰。句集に『書信』『讀本』『木簡』(第69回読売文学賞) 『礫』、著書に『言葉の力を鍛える俳句の授業―ワンランク上の俳句を目指して』『シリーズ自句自解Ⅱ ベスト100 山口昭男』『波多野爽波の百句』がある。日本文藝家協会会員

 

 

 

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バックナンバー

  • 10月19日:むかごほどまどろんでゐる女かな
  • 10月18日:うつすもの何もなき水爽波の忌
  • 10月17日:甘藷蔓こんがらがつて嵩高し
  • 10月16日:お駄賃の柿の四角て大きくて
  • 10月15日:梨売のそんなに梨を剥かんでも
  • 10月14日:初獵やみどり明るき枝の棘
  • 10月13日:くつきりと木目のうかぶ砧かな
  • 10月12日:囲まれて菊人形は人を見る
  • 10月11日:いつまでもいつもこの白菊が好き
  • 10月10日:鳥渡る畳みて地図のふくらめり
  • 10月9日:海老の尾に滲む七色豊の秋
  • 10月8日:阿呆らしきほど鳥威ゆれてをる
  • 10月7日:案山子翁何を小耳にはさまれし
  • 10月6日:ばつた飛ぶあの子がほしい遊びかな
  • 10月5日:妃の如く翅拡げたる蝗かな
  • 10月4日:菌山いとこもをればはとこをる
  • 10月3日:蛇笏忌の雨粒まとふ日ざしかな
  • 10月2日:革靴に素足の男天高し
  • 10月1日:にはたづみ秋日あふるるまでためる

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