《十月二十四日》秋耕のたちまち鳥をふやしをり

安易に「光」「母」「風」などを取り入れて五七五で作ってしまう初心者の句に出合うことが、よくある。爽波も「すぐ山が見えたり水が光ったり雲が飛んだりということで作るのではなく、眼前にある自然の一とかけらに深い凝視送ること」と指摘している(一九七四年「青」十一月号「選後に」)。

●季語=秋耕(秋)

著者略歴

山口昭男(やまぐち・あきお)

1955年兵庫県生まれ。波多野爽波、田中裕明に師事。 「秋草」主宰。句集に『書信』『讀本』『木簡』(第69回読売文学賞) 『礫』、著書に『言葉の力を鍛える俳句の授業―ワンランク上の俳句を目指して』『シリーズ自句自解Ⅱ ベスト100 山口昭男』『波多野爽波の百句』がある。日本文藝家協会会員

 

 

 

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バックナンバー

  • 10月24日:秋耕のたちまち鳥をふやしをり
  • 10月23日:はしきよし姉妹ならびて実紫
  • 10月22日:草の実をつけたる恋のはじめかな
  • 10月21日:弟は胡桃の如く眠りたる
  • 10月20日:萩刈の表情うすき人らかな
  • 10月19日:むかごほどまどろんでゐる女かな
  • 10月18日:うつすもの何もなき水爽波の忌
  • 10月17日:甘藷蔓こんがらがつて嵩高し
  • 10月16日:お駄賃の柿の四角て大きくて
  • 10月15日:梨売のそんなに梨を剥かんでも
  • 10月14日:初獵やみどり明るき枝の棘
  • 10月13日:くつきりと木目のうかぶ砧かな
  • 10月12日:囲まれて菊人形は人を見る
  • 10月11日:いつまでもいつもこの白菊が好き
  • 10月10日:鳥渡る畳みて地図のふくらめり
  • 10月9日:海老の尾に滲む七色豊の秋
  • 10月8日:阿呆らしきほど鳥威ゆれてをる
  • 10月7日:案山子翁何を小耳にはさまれし
  • 10月6日:ばつた飛ぶあの子がほしい遊びかな
  • 10月5日:妃の如く翅拡げたる蝗かな
  • 10月4日:菌山いとこもをればはとこをる
  • 10月3日:蛇笏忌の雨粒まとふ日ざしかな
  • 10月2日:革靴に素足の男天高し
  • 10月1日:にはたづみ秋日あふるるまでためる

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