
《三月二十八日》春暮れやらぬ墓の頭蓋骨笛を聴く
しゃがみこんで、そっとすくい上げる。月は、光の膜をまとったまま、わたしの手のなかでかすかに震えていた。爪を立てると、皮が裂け、果肉が弾けた。その瞬間、わたしは見てしまった。果肉の粒、一つ一つに、小さな目があるのを。しかも、こっちを見ている。まばたきした。目をこすった。それでも、消えない。わたしは、息を呑んだ。
無断転載・複製禁止
しゃがみこんで、そっとすくい上げる。月は、光の膜をまとったまま、わたしの手のなかでかすかに震えていた。爪を立てると、皮が裂け、果肉が弾けた。その瞬間、わたしは見てしまった。果肉の粒、一つ一つに、小さな目があるのを。しかも、こっちを見ている。まばたきした。目をこすった。それでも、消えない。わたしは、息を呑んだ。
無断転載・複製禁止