《八月八日》麺麭食うて頬ふくらます夜食かな

ボルヘスの「死んだ男」を読む。
昭和二十二年八月八日の虚子句日記は「稽古会、第五日」「怪談はゆふべでしまひ秋の立つ」。このときの句会の参加者は京極杞陽、村松紅花、上村占魚など。若い弟子たちは、夜は怪談に興じていたのかもしれない。夏が終わったのだから怪談もお終いにしなさいと諭すような調子。若い俳人に囲まれた虚子の温顔が目に浮かぶようだ。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

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  • 8月24日:小さき町小さき自動車秋の風
  • 8月23日:尾の如き長き柄のあり桐一葉
  • 8月22日:枝豆や雄弁にして少し野卑
  • 8月21日:きりぎりす蔓ながながと風に乗り
  • 8月20日:口うごかしながら行く人秋の風
  • 8月19日:鉦叩昼の光の及びつつ
  • 8月18日:鉦叩秋の朧の月であり
  • 8月17日:雑然としてあのあたり鰯雲
  • 8月16日:桔梗の咲く坂道も庭の中
  • 8月15日:野分てふ言葉を知りて野分中
  • 8月14日:降りつのる雨に桔梗の花は八重
  • 8月13日:昼の蛾もゐて大いなる秋の蝶
  • 8月12日:三日月のするどきところ雲に透け
  • 8月11日:桔梗の高々として旱かな
  • 8月10日:広々と硝子障子や秋の蝶
  • 8月9日:遠くしづかに法師蟬鉦叩
  • 8月8日:麺麭食うて頬ふくらます夜食かな
  • 8月7日:秋の日の香水はやや甘き香に
  • 8月6日:夕空の暗さを蠅の眼かな
  • 8月5日:この町の朝の片陰登庁す
  • 8月4日:日盛や土に影して軒簾
  • 8月3日:雲うすうす避暑の子どもら匙つかふ
  • 8月2日:終点の町や頭上の雲の峰
  • 8月1日:橋をゆく日除下げたる冷房車

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