《八月十二日》三日月のするどきところ雲に透け

老母を、定期検査のため市民病院に連れてゆく。
昭和二十一年八月十二日の虚子句日記は「稽古会、第四日」。「秋茄子の日に籠にあふれみつるかな」「虹立ちて消えぬ三国に人の病む」と日々充実した句作。三国に病む森田愛子が亡くなったのは、その翌年の四月だ。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 8月24日:小さき町小さき自動車秋の風
  • 8月23日:尾の如き長き柄のあり桐一葉
  • 8月22日:枝豆や雄弁にして少し野卑
  • 8月21日:きりぎりす蔓ながながと風に乗り
  • 8月20日:口うごかしながら行く人秋の風
  • 8月19日:鉦叩昼の光の及びつつ
  • 8月18日:鉦叩秋の朧の月であり
  • 8月17日:雑然としてあのあたり鰯雲
  • 8月16日:桔梗の咲く坂道も庭の中
  • 8月15日:野分てふ言葉を知りて野分中
  • 8月14日:降りつのる雨に桔梗の花は八重
  • 8月13日:昼の蛾もゐて大いなる秋の蝶
  • 8月12日:三日月のするどきところ雲に透け
  • 8月11日:桔梗の高々として旱かな
  • 8月10日:広々と硝子障子や秋の蝶
  • 8月9日:遠くしづかに法師蟬鉦叩
  • 8月8日:麺麭食うて頬ふくらます夜食かな
  • 8月7日:秋の日の香水はやや甘き香に
  • 8月6日:夕空の暗さを蠅の眼かな
  • 8月5日:この町の朝の片陰登庁す
  • 8月4日:日盛や土に影して軒簾
  • 8月3日:雲うすうす避暑の子どもら匙つかふ
  • 8月2日:終点の町や頭上の雲の峰
  • 8月1日:橋をゆく日除下げたる冷房車

俳句結社紹介

Twitter