《十月二十六日》ななかまど峠はころびやすきもの

爽波は「青」で「枚方から」という一頁の文章を連載した。俳句について伝えたかったことを端的に記している。一九八六年六月号で選句について語っている。 「選句とは、相撲の立合いの一瞬のようなもので、廻ってきた句稿との瞬時の切り結びである」と言っている。そう言えば、清記された句を全て写しとっている人には声をかけていた。

●季語=ななかまど(秋)

著者略歴

山口昭男(やまぐち・あきお)

1955年兵庫県生まれ。波多野爽波、田中裕明に師事。 「秋草」主宰。句集に『書信』『讀本』『木簡』(第69回読売文学賞) 『礫』、著書に『言葉の力を鍛える俳句の授業―ワンランク上の俳句を目指して』『シリーズ自句自解Ⅱ ベスト100 山口昭男』『波多野爽波の百句』がある。日本文藝家協会会員

 

 

 

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バックナンバー

  • 10月31日:アボガドの全き緑暮の秋
  • 10月30日:散る柳かたよりながらかたまれり
  • 10月29日:末枯へスポンジの水押し出しぬ
  • 10月28日:マカロニの狭き空洞紅葉山
  • 10月27日:手をおけば擬宝珠あたたか梅もどき
  • 10月26日:ななかまど峠はころびやすきもの
  • 10月25日:籾埃ぶあつきままに道へ出る
  • 10月24日:秋耕のたちまち鳥をふやしをり
  • 10月23日:はしきよし姉妹ならびて実紫
  • 10月22日:草の実をつけたる恋のはじめかな
  • 10月21日:弟は胡桃の如く眠りたる
  • 10月20日:萩刈の表情うすき人らかな
  • 10月19日:むかごほどまどろんでゐる女かな
  • 10月18日:うつすもの何もなき水爽波の忌
  • 10月17日:甘藷蔓こんがらがつて嵩高し
  • 10月16日:お駄賃の柿の四角て大きくて
  • 10月15日:梨売のそんなに梨を剥かんでも
  • 10月14日:初獵やみどり明るき枝の棘
  • 10月13日:くつきりと木目のうかぶ砧かな
  • 10月12日:囲まれて菊人形は人を見る
  • 10月11日:いつまでもいつもこの白菊が好き
  • 10月10日:鳥渡る畳みて地図のふくらめり
  • 10月9日:海老の尾に滲む七色豊の秋
  • 10月8日:阿呆らしきほど鳥威ゆれてをる
  • 10月7日:案山子翁何を小耳にはさまれし
  • 10月6日:ばつた飛ぶあの子がほしい遊びかな
  • 10月5日:妃の如く翅拡げたる蝗かな
  • 10月4日:菌山いとこもをればはとこをる
  • 10月3日:蛇笏忌の雨粒まとふ日ざしかな
  • 10月2日:革靴に素足の男天高し
  • 10月1日:にはたづみ秋日あふるるまでためる

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