《三月三十一日》企救郡ごほり文字もじが関せき処どに生ひ成れや一ひと生よをかけて読み書きぞする
門司は文字に通い、上古、中世、近世の文に志を持つ旅人たちは、文字が関戸を潜くくって心尽こころつくしの国、すなわち筑紫の領域に入ると考えることを好んだものだが、これも現代には通用しまい。そこを敢えて先日、北九州芸術劇場で催された文化勲章受章記念講演の演題は「文字に導かれて」。
著者略歴
高橋睦郎(たかはし・むつお)
昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。
詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。
歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)
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