一月の日本にいるのは四半世紀ぶり。いろんなことが新鮮だ。先日はスーパーで山積みのにぎり寿司セットと遭遇し、「えっ。日本人ってこんなにもお寿司を食べるの…?」と、おののいてしまった。また、そんなことにおののく自分にもおののく。だって、かつてはそれがあたりまえの光景だったはずなのだから。にぎり寿司の山の向こうに、失われた記憶が帯となってうっすらとただよっている気がした。
著者略歴
小津夜景(おづ・やけい)
1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。
(ヘッダー写真:小津夜景)
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