《四月二十四日》あと一口触れてひかりのなき手ざわり
バナナの皮をむいた。
でも、むいてから、実はそんなに食べたくないことに気づいたので、そのまま冷蔵庫に入れた。わたしはよくこういうことをする。「なんとなくむいちゃったし、しょうがないから食べるか」とはならない。ご飯でもおかずでも、あとひとくちしか残っていなくても、ほしくないことに気づいたら冷蔵庫に入れる。自分が本当はなにを欲し、どう考えているのかを観察し、その通りに動く訓練として。
著者略歴
１９７３北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』（第８回田中裕明賞）、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。
（ヘッダー写真：小津夜景）
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