《七月三日》百足またボルヘスの書を這ふ夜かな

歩いていると、「アイスの季節ですね」という声が、どこからともなく聞こえてきた。おお、たしかに。家に帰るなり、いそいそと豆腐を水切りし、そこへバナナと黒胡麻ペーストとはちみつを投入。なめらかになるまで混ぜて、冷凍庫へ。甘みのないごはんのあと、ディッシャーですくえば、ちゃんとそれはアイスのかたちをしていて、味も、まあ、アイスじゃないこともなかった。でも、まあ、うーん、という感じ。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 7月3日:百足またボルヘスの書を這ふ夜かな
  • 7月2日:蚤を飼ふシェイクスピアの失恋記
  • 7月1日:打ち水や梁をくゆらし光の緒

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