《九月一日》トランペット色の浜辺や秋の風

商店街の花屋の店先に、ひまわりが並んでいた。茎の切り口から水がぽたぽた落ちて、アスファルトに小さなしみをつくっている。ひまわりといえばソフィア・ローレン。あの映画の曲を、いまでも若いトランペッターたちが海辺で練習している。風に乗って旋律が流れてくるたび胸がしめつけられ、涙がこぼれる。同時に、なぜか水野晴雄の笑顔が脳裏に浮かび、情緒に横やりを入れてくる。どうにかならんやろか。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 9月3日:秋高し壁ぬけてゆく水の息
  • 9月2日:陶土揉む背にしみわたる残暑かな
  • 9月1日:トランペット色の浜辺や秋の風

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