《十月二十日》数ふれば声みな雁となりにけり

宗教について、まだ真剣に考えたことがない。けれどシンプルに分けるなら、自分は無神論者ということになるのだろう。理由は単純で、祈らないからだ。神社で手を合わせることもないし、祈るという行為そのものに疑問を感じている。だってわざわざこちらが両手を合わせる理由はないじゃないか。神さまのほうから挨拶してくれたらいい。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 10月20日:数ふれば声みな雁となりにけり
  • 10月19日:きつねのかみそり手紙をわすれても咲く
  • 10月18日:アフのこゑ雨にうつろふ柿に似て
  • 10月17日:つぶれたひかりにふれてにんげんがうごく
  • 10月16日:しづかな裏へ短剣かくす秋風や
  • 10月15日:稲妻をまちがへて眼がふえてくる
  • 10月14日:水脈オーみちていさよふとんぼかな
  • 10月13日:声隊ルー鯊のひれにもふれにけり
  • 10月12日:ヴォを呼べば花野は翳のままひろし
  • 10月11日:萩の雨こゑのたましいをかすめる
  • 10月10日:笑ひだす甕のひとくれ鮭颪
  • 10月9日:仮面だけ秋祭りからもどらない
  • 10月8日:こゑが壁ぬけてゆく絵の鈴鹿かな
  • 10月7日:美術展ガラスの笛を抱く子かな
  • 10月6日:糸ひらめく秋の書のいまこの頁
  • 10月5日:虫売のこゑに壊れてしまひけり
  • 10月4日:触角だけでつづられる遠い便り
  • 10月3日:松茸飯塔のひざまで夜が来る
  • 10月2日:鵙啼いて水は過去形になりぬ
  • 10月1日:木犀やお帰りの手は濡れたまま

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