《十一月四日》鳥兜むらさきの雨ねぢれ降る

小説の魅力は作者の意識の偏りや歪みをのぞきこむ感覚にある。どんなに完成度が高くても、著者名がチーム名だったら読者は興奮しない。求められるのは整った品質ではなく、かけがえのない個の魂なのだ。だから裏で何人が手助けしていようとも表紙に名がのるのは一人。「小説とはひとりの脳が燃えた跡」という形式上のお約束こそが、近代文学における小説の一人勝ちを支えてきた。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 11月4日:鳥兜むらさきの雨ねぢれ降る
  • 11月3日:山葡萄くすりともせず熟れにけり
  • 11月2日:鰡の群れ太鼓の胴を泳ぎゆく
  • 11月1日:秋の象うすうくうすうく風を舐め

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