《十二月二日》落葉ふわっと乗っかってくる上目づかい

手先が不器用で、こまごましたものが苦手である。京都に多いイロハモミジの葉など眺めているだけで落ち着かない。葉が小さく、切れ込みが深く、線が細い。つい「もっと大づかみであれ」と思ってしまう。その点、楓の大きな葉は安心する。形がはっきりしていてこちらの視線を迷わせない。好みとは、結局のところ身体の癖が決めているのだろう。意匠の細やかさよりも輪郭の大らかさに惹かれる人間らしい。今、秋の道を歩いていて思った。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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