《一月九日》寒禽や大きな鳥のただしづか

金原亭馬治師匠から酒飲み話で聞いたのだが、バードウォッチングをする人が嫌いな鳥のナンバーワンは鳩だそうだ。なるほど、野鳥のそばに鳩がいると、野鳥の野鳥らしさを鳩がダメにするのだろう。小川軽舟さんが「渡り鳥近所の鳩に気負いなし」と詠んだ、あの鳩の感じだ。
昭和二十八年一月九日の虚子句日記は「焚火して当る横顔鼻低し」という一句。この句の気負いの無さは、そんじょそこらの鳩のごとし。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

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  • 1月12日:坐ることなき冬帽の男かな
  • 1月11日:枯芝の松葉の向きのよく揃ふ
  • 1月10日:枯芝に枯木はうすき影をひき
  • 1月9日:寒禽や大きな鳥のただしづか
  • 1月8日:冬空の青きところを白き雲
  • 1月7日:見下ろせばそそり立ちをり霜柱
  • 1月6日:水仙や生々しくて抽象画
  • 1月5日:室咲や司書の立居の気配なく
  • 1月4日:福笑ピカソの女とも違ふ
  • 1月3日:正月や映画に泣いて愚かなる
  • 1月2日:読初や在五業平愚かなる
  • 1月1日:初東風や車掌と車掌一礼す

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