
《一月十五日》寒鴉扉外れしバスの上
錆びてぼろぼろになったバスが空き地に放置されている。その屋根の上に鴉がとまっている。三十年ほど前にインドに行ったときは、扉が外れたままのバスが走っていた。運転士の足が丸見えだった。
昭和十五年一月十五日の虚子句日記は「玉藻吟行会。麹町永田町、眞下宅」。このとき虚子は「鋪道」を句に詠んだ。「冬の日の当りて堅き鋪道かな」だ。ただそれだけのことだが、「硬き」の一語で句が生きていると思う。
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錆びてぼろぼろになったバスが空き地に放置されている。その屋根の上に鴉がとまっている。三十年ほど前にインドに行ったときは、扉が外れたままのバスが走っていた。運転士の足が丸見えだった。
昭和十五年一月十五日の虚子句日記は「玉藻吟行会。麹町永田町、眞下宅」。このとき虚子は「鋪道」を句に詠んだ。「冬の日の当りて堅き鋪道かな」だ。ただそれだけのことだが、「硬き」の一語で句が生きていると思う。
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