《一月二十四日》老人に寄鍋の海老煮えてをり

チェーンの居酒屋でも、なるべく季語になるものを注文したい。たとえば寄鍋。困ったことに、句が出来るまで食べられないのだ。
昭和十二年一月二十四日の虚子句日記は「日比谷公園、きん楽。みずほ、素十、憲二郎と共。水竹居招宴」。新潟医大の面々と虚子を、三菱地所の重役の水竹居が招待したのだ。虚子の「盆持つて踊りし春の妓は小文」はそのさいの座興。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

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バックナンバー

  • 1月24日:老人に寄鍋の海老煮えてをり
  • 1月23日:にほどりや小田急古き型が行く
  • 1月22日:ミツキーの耳を噛みをり炬燵の子
  • 1月21日:風花や雲なつかしく吹かれ消え
  • 1月20日:笹鳴や末社末社にカツプ酒
  • 1月19日:瑞巌寺門前牡蠣の殻が焦げ
  • 1月18日:二三人焼藷買ふの買はぬのと
  • 1月17日:遺構見る我と誰かと冬明るく
  • 1月16日:炉火楽し上へ上へとゆく煙
  • 1月15日:寒鴉扉外れしバスの上
  • 1月14日:どら焼と子どもの顔と春を待つ
  • 1月13日:雲遠く映りて甕に寒の水
  • 1月12日:坐ることなき冬帽の男かな
  • 1月11日:枯芝の松葉の向きのよく揃ふ
  • 1月10日:枯芝に枯木はうすき影をひき
  • 1月9日:寒禽や大きな鳥のただしづか
  • 1月8日:冬空の青きところを白き雲
  • 1月7日:見下ろせばそそり立ちをり霜柱
  • 1月6日:水仙や生々しくて抽象画
  • 1月5日:室咲や司書の立居の気配なく
  • 1月4日:福笑ピカソの女とも違ふ
  • 1月3日:正月や映画に泣いて愚かなる
  • 1月2日:読初や在五業平愚かなる
  • 1月1日:初東風や車掌と車掌一礼す

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