《二月二十二日》手の甲に梅の影あり雲が伸び

豚汁を蕎麦にかけたものを手早くこしらえて家族の昼食に供する。これを食わせると家族はいい顔をしない。味噌の蕎麦汁は世に存在するし、蕎麦屋のメニューには肉南蛮がある。それと同じだと家族には言うのだが……。
昭和十年二月二十二日の虚子句日記は「鎌倉俳句会。たかし庵」。「枯草を降りやはらげて春の雨」。「降りやはらげて」がいい感じだ。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

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  • 2月22日:手の甲に梅の影あり雲が伸び
  • 2月21日:二つあり一つ消えつつ春の雲
  • 2月20日:幹を撫で頭のうへに梅の花
  • 2月19日:薄氷のとぎれとぎれや木の葉浮く
  • 2月18日:うたかたの影ある石や春の水
  • 2月17日:草萌や常の如くに海と崖
  • 2月16日:春の雪白き碍子につきて消ゆ
  • 2月15日:こときれし鼻の孔ある涅槃かな
  • 2月14日:梅散るや中はがらんと古き家
  • 2月13日:シヤーロツクホームズ春の土を嗅ぐ
  • 2月12日:春宵や酒のまぬ子に甘き豆
  • 2月11日:風に人よろめく春の鳶かな
  • 2月10日:草の餅柔らかさうに重さうに
  • 2月9日:梅折つて挿してダンボールに暮らす
  • 2月8日:富士聳え春の光が枯草に
  • 2月7日:春や鯉おほきな鱗見えて過ぐ
  • 2月6日:日の暮は日々夕茜草萌ゆる
  • 2月5日:雪解や撞くがままなる寺の鐘
  • 2月4日:白々と枯れたるものや寒明くる
  • 2月3日:出口より出てゆく鬼や豆を撒く
  • 2月2日:大根を箱根の山に干しにけり
  • 2月1日:名物がおでんなりとや町淋し

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