《三月二十三日》何も知らず大きなシャボン玉を吹く

辻桃子さんの『白桃抄』を再読する。句の呼吸がなつかしい。
昭和十四年三月二十三日の虚子句日記は「丸之内倶楽部俳句会」「鳶のごと鷹舞ひ澄むや草を摘む」「日輪の低く親しや草を摘む」「窓際に種痘のかひな差し延べて」「陽炎の石を仏と拝みけり」など、好もしい句がならぶ。鷹が鳶のようで、日輪が低く親しいのが虚子の世界だ。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 3月23日:何も知らず大きなシャボン玉を吹く
  • 3月22日:零戦とゴジラが棚に日永かな
  • 3月21日:くつきりと木に寄生木や彼岸鐘
  • 3月20日:人の子が蝌蚪を採りをり蝌蚪無数
  • 3月19日:年寄の爪伸びてゐる日永かな
  • 3月18日:吸ふ傷の己が血甘き弥生かな
  • 3月17日:地虫出づ泣いてゐる子のいい匂ひ
  • 3月16日:缶プシュと春の夜道の女の子
  • 3月15日:キユーと鳴く子猫の耳の桔梗めく
  • 3月14日:風の日のものの白さや冴返る
  • 3月13日:そのかみの繭の港の猫の恋
  • 3月12日:永き日のバリカン上へ上へ刈る
  • 3月11日:たのしさは炎ちひさき春焚火
  • 3月10日:誰の絵に似て雲映る春の海
  • 3月9日:寄居虫の王道楽土わが前に
  • 3月8日:顔を吹く春風船具など鬻ぎ
  • 3月7日:沈みたる椿の花の上に蝌蚪
  • 3月6日:物干して港に住めるシヤボン玉
  • 3月5日:会館を駆くるモツプや風光る
  • 3月4日:猫にもの問ふもせんなし梅の花
  • 3月3日:すいと出でて何の茎立かと思ふ
  • 3月2日:腹減らぬままにもの食ふ春の雲
  • 3月1日:吾がための余寒の土筆摘みにけり

俳句結社紹介

Twitter