《八月二十五日》エオリアンハープ海月の造船所
昔、アパルトマンの前に不要になったプリントごっこ（理想科学工業の家庭用簡易印刷機）を出していたら、ピンポンが鳴った。ドアをあけると、フランス人男性と韓国人女性のカップル。わたしが捨てたプリントごっこを抱えている。「これ、もらっていいですか？」。いいけど、もうフラッシュランプが手に入らないから版下は作れませんよ、と告げると、「いいんです、インテリアにするんで。部屋に飾る黄色のアイテムを集めてるんです」と言う。なるほど。
著者略歴
１９７３北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』（第８回田中裕明賞）、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。
（ヘッダー写真：小津夜景）
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