《九月四日》秋の風ローラー跡を撫でて去る

郵便受けに、カモメの羽入りの手紙が入っていた。いたずらかと思ったら、アパルトマンの管理人からだ。青いペンで「Bonne journée」と書いたカードがついていた。まえにも羽入りの手紙をもらったことがある。オランダに住む音楽家の方からだった。逆に自分が出したこともある。俳人の中原道夫さん宛。深い意味はない。たまたま机の中に羽があったから、なんとなく一緒に入れたのだった。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 9月4日:秋の風ローラー跡を撫でて去る
  • 9月3日:秋高し壁ぬけてゆく水の息
  • 9月2日:陶土揉む背にしみわたる残暑かな
  • 9月1日:トランペット色の浜辺や秋の風

俳句結社紹介

Twitter