《一月八日》冬空の青きところを白き雲

何年か前、最後に乗った観覧車は「いよてつ髙島屋」というデパートの屋上にあるもの。一月のあたたかい日、「あしらの俳句甲子園」の審判をするため松山市に行ったとき「みきゃんアプリ」のクーポンを使って乗ったのだった。
昭和十五年一月八日の虚子句日記には「笹鳴会。丸之内倶楽部日本間」とある。そのときの句の一つが「すべり来るスキー映画に大映し」。暖房の効いた映画館でじっと映画に見入っている虚子の顔が目に浮かぶ。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

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バックナンバー

  • 1月15日:寒鴉扉外れしバスの上
  • 1月14日:どら焼と子どもの顔と春を待つ
  • 1月13日:雲遠く映りて甕に寒の水
  • 1月12日:坐ることなき冬帽の男かな
  • 1月11日:枯芝の松葉の向きのよく揃ふ
  • 1月10日:枯芝に枯木はうすき影をひき
  • 1月9日:寒禽や大きな鳥のただしづか
  • 1月8日:冬空の青きところを白き雲
  • 1月7日:見下ろせばそそり立ちをり霜柱
  • 1月6日:水仙や生々しくて抽象画
  • 1月5日:室咲や司書の立居の気配なく
  • 1月4日:福笑ピカソの女とも違ふ
  • 1月3日:正月や映画に泣いて愚かなる
  • 1月2日:読初や在五業平愚かなる
  • 1月1日:初東風や車掌と車掌一礼す

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