焼藷は焚火でというのが、子供時代の定番だった。今は、難しい。そこで、軽トラで焼藷を売りに来る。拡声器を通していつもの声を聞くと不思議に郷愁にかられる。新聞紙に包まれた焼藷は、美味しい。落葉で焼いた藷はもっと美味しかった。剥いた皮を焚火に抛り込むのもひとつの楽しみだった。
●季語=焼薯(冬)
著者略歴
山口昭男(やまぐち・あきお)
1955年兵庫県生まれ。波多野爽波、田中裕明に師事。
「秋草」主宰。句集に『書信』『讀本』『木簡』(第69回読売文学賞)
『礫』、著書に『言葉の力を鍛える俳句の授業―ワンランク上の俳句を目指して』『シリーズ自句自解Ⅱ ベスト100 山口昭男』『波多野爽波の百句』がある。日本文藝家協会会員
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