《十二月二日(月)》国と国との約束を綴ぢし朱の封蝋に人の指先は見ゆ
日南市の小村寿太郎記念館にポーツマス条約の調印書の実物が展示されており、夫と見に行ってきた。普段は外務省外交史料館にあり、なかなか見ることができない貴重なもの。日南出身の小村寿太郎の直筆のサイン、綴じ紐を封印する封蝋の朱色や綴じ紐の汚れに、当時の人の息遣いを感じた。そして国と国とが向き合うという場の緊張感はどのようなものかと想像した。
著者略歴
大口玲子(おおぐち・りょうこ)
1969年東京都大田区生まれ。宮城県仙台市、石巻市を経て、現在は宮崎県宮崎市在住。1998年、「ナショナリズムの夕立」で第四十四回角川短歌賞受賞。
歌集に『海量』、『東北』、『ひたかみ』、『トリサンナイタ』、『桜の木にのぼる人』、『ザベリオ』、『自由』、歌文集に『セレクション歌人5 大口玲子集』『神のパズル』がある。「心の花」会員。宮崎日日新聞「宮日文芸」短歌欄選者。牧水・短歌甲子園審査員。
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