《四月二日》ぬなわう起爆せぬ語のピンを抜く

レジで「ありがとうございます」と言われた。
声はちゃんと聞こえたけれど、向こうを見てるような調子だった。
わたしも「ありがとうございます」と返したものの、声が届かなかった気が。
帰り道、舗道にぬれたバウヒニアの葉が数枚、ひらべったく貼りついていた。ぬかるみに似た午後だった。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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