雨の朝、ドアノブに触れたとたん、冷たさが指のなかで小さな鐘のように鳴る。 そのまま部屋に入り、テーブルの上に置いてあった冊子を何気なく手に取る。 紙にふれた瞬間、彼女は「あれ?」と思った。
著者略歴
1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。
(ヘッダー写真:小津夜景)
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