
《六月三日》風鈴や裏返りゆく紙の町
ページは予想よりもよく燃えた。紙質のせいか、炭化速度が高かった。ページが灰になる瞬間、雨が降り出した。濡れた紙がくすぶる匂いを、今でも時々、夢の中で嗅ぐ。湿気を含んだ火は、燃えきることをためらって、まるで「ここに残っていいか」とでも訊ねるように、白煙を細く引いていた。
無断転載・複製禁止
ページは予想よりもよく燃えた。紙質のせいか、炭化速度が高かった。ページが灰になる瞬間、雨が降り出した。濡れた紙がくすぶる匂いを、今でも時々、夢の中で嗅ぐ。湿気を含んだ火は、燃えきることをためらって、まるで「ここに残っていいか」とでも訊ねるように、白煙を細く引いていた。
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