《六月十九日》繭ひとつ置きしより塔崩れをり
──いまの、それです。
「どれ？」
──発声の寸前が、いちばん軽くなります。だいたい、０.３グラムほど。泣くと、逆に重くなります。たとえば、言葉を飲み込んだとき。あれがだいたい、０.８グラム。呼び止められて、うまく返事ができなかったときは、１.５。
「……言葉って、そういうものか。いや、どうなんだろう」
著者略歴
１９７３北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』（第８回田中裕明賞）、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。
（ヘッダー写真：小津夜景）
無断転載・複製禁止
