《十二月十二日》あなぐまの夢よりさめて妻の怒気

あなぐまが好きだ。あのどっちつかずの風貌を見るとむずむずしてくる。もちろん「どっちつかず」なんて感覚は人間が勝手に線を引いた都合であって自然界にそんな区切りはない。ないけれど、私の頭の中の動物地図ではどうしても「あれはたぬきでもなく、くまでもなく、そのあいだで変な顔をしている子」に分類される。わたし自身の素顔を見るようで面白い。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 12月12日:あなぐまの夢よりさめて妻の怒気
  • 12月11日:風邪ひいてほめられたことばかり思ふ
  • 12月10日:蜜柑むくみんなの手から夜がこぼれる
  • 12月9日:短日やバターたっぷりのごほうび
  • 12月8日:炬燵から出ずに謝る午後三時
  • 12月7日:寒昴みづのゆらぎの底までも
  • 12月6日:ねずみもちひとは名づけるのが上手
  • 12月5日:冬の波ちょっと小走りになる夕
  • 12月4日:扉絵のごとき静けさ冬の家
  • 12月3日:枯蔦のくるんとしたとこ好きになる
  • 12月2日:落葉ふわっと乗っかってくる上目づかい
  • 12月1日:狐火が遠くて今日の皿が割れ

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