《五月三十日》この山の僧の秘めごと蟻地獄

ブーダンの展覧会に行き、風景画を楽しむ。
昭和二十五年五月三十日の虚子句日記は「新潟句謡会。かき正」「加ふるに杞陽みやげの鯖の鮓」「この鮓のなるゝあす午後三時頃」。なれ鮓を自在に詠んでいる。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

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バックナンバー

  • 5月30日:この山の僧の秘めごと蟻地獄
  • 5月29日:孑孑や首傾けてマリアさま
  • 5月28日:昼の蛾の柱にひそと子は眠り
  • 5月27日:薔薇園や鴉はげしく鴉追ふ
  • 5月26日:化けて出たやうな大きな夏の月
  • 5月25日:昔その子と蛇苺舐めしこと
  • 5月24日:夏蝶よ我が手の甲を吻もて突く
  • 5月23日:坐す人のうしろは壁や堂涼し
  • 5月22日:黒南風に葛這ふ岸の蛇籠かな
  • 5月21日:心太紙幣で払うて祖父やさし
  • 5月20日:浜木綿やともしび暗きとんかつ屋
  • 5月19日:風鈴やあるとき何もかも消えて
  • 5月18日:風鈴を扇ぎ鳴らして遊びけり
  • 5月17日:蠅帳の中に二皿窓明り
  • 5月16日:蝶とまる青き簾のこちら側
  • 5月15日:百合赤し鯉の生簀にそそぐ水
  • 5月14日:緑蔭やくはへし飴の棒長く
  • 5月13日:十字架は縦に長くて青嵐
  • 5月12日:卯の花の花粉黄色し人につく
  • 5月11日:山中や老いたるあやめ花を垂れ
  • 5月10日:白玉のつめたさ残る匙を置く
  • 5月9日:ふさふさの髪の毛見えて夏帽子
  • 5月8日:墓にふと捩り花あり雲明るく
  • 5月7日:ぽつねんと居るや西日に前を向き
  • 5月6日:夕虹やもやし炒めを火がつつみ
  • 5月5日:遠き木の古巣見えたり雲まれに
  • 5月4日:鐘鳴つて五時は明るき接木かな
  • 5月3日:石鹸玉ごみ食ふ鳩に幸あれと
  • 5月2日:鉄の柵錆びてぐらぐら百千鳥
  • 5月1日:素甘あり桜餅より大いなる

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