《六月十七日》この家の主と薔薇と錦蛇

晩年の黒田杏子さんが「読みなさい」と言ってくださった『石牟礼道子全句集 泣きなが原』を再読。
昭和十三年六月十七日の虚子句日記は「家庭俳句会。丸ビル写生」「梅雨傘をさげて丸ビル通り抜け」。梅雨のさなか、濡れた傘を手にさげて丸ビルを通り抜ける。しいていえば「通り抜け」が「写生」か。天下の「丸ビル」がただのビルとして詠まれている。

著者略歴

岸本尚毅(きしもと・なおき)

1961年岡山県生。著書に『文豪と俳句』『露月百句』、編著『室生犀星俳句集』『新編
虚子自伝』など。岩手日報・山陽新聞俳壇選者、角川俳句賞選考委員。

 

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バックナンバー

  • 6月17日:この家の主と薔薇と錦蛇
  • 6月16日:緑蔭に蝶とぶ昼餉いつまでも
  • 6月15日:色町の豆腐屋もまた水を打つ
  • 6月14日:夕立の乾きふたたび熱き墓
  • 6月13日:置物の如くに男お旅所に
  • 6月12日:青あらし折々人の高笑ひ
  • 6月11日:はつたいの湯気かすかなり四方に山
  • 6月10日:絡み合ひながら真夏へ真葛ども
  • 6月9日:深く澄んで清水のごとし石牡丹
  • 6月8日:サイダーを注ぎ分けてただ老いてゆく
  • 6月7日:海見ゆる窓にいくつも蝸牛
  • 6月6日:まづしげな氷河の絵ありソーダ水
  • 6月5日:二の腕の蠅こそばゆき昼寝かな
  • 6月4日:脚三つ持てる大きな扇風機
  • 6月3日:花屋の薔薇八百屋のバナナ大西日
  • 6月2日:押し来るや頭分厚き黄金虫
  • 6月1日:よき稚児や木魚大きく涼しげに

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