《五月六日(月)》息子といふ遊び相手も居なくなり佐土原のくぢらのぼり見にゆく
宮崎市佐土原町では鯉のぼりとともに「鯨のぼり」が泳いでいる。佐土原島津家に男子が生まれた時に「鯨のように大きく、力強く育って欲しい」と藩の御用菓子屋に「くじらようかん」を献上させた江戸時代初期から、佐土原では鯨が縁起物となっているとか。今も銘菓として販売されているが、求肥をあんこで挟んだもので「ようかん」というよりお餅に近い気がする。鯨のぼりのほうは歴史が浅く、二十数年前に考案されたらしい。さすがに鯉のぼりよりも大きくて迫力がある。
著者略歴
大口玲子(おおぐち・りょうこ)
1969年東京都大田区生まれ。宮城県仙台市、石巻市を経て、現在は宮崎県宮崎市在住。1998年、「ナショナリズムの夕立」で第四十四回角川短歌賞受賞。
歌集に『海量』、『東北』、『ひたかみ』、『トリサンナイタ』、『桜の木にのぼる人』、『ザベリオ』、『自由』、歌文集に『セレクション歌人5 大口玲子集』『神のパズル』がある。「心の花」会員。宮崎日日新聞「宮日文芸」短歌欄選者。牧水・短歌甲子園審査員。
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