《十二月四日(水)》日曜の聖書朗読当番を忘れたる夢に蟹は走れる

フランシスコ・ザビエルには蟹にまつわる伝説がある。船底に空いた穴を蟹が甲羅を押しつけてふさいでくれたとか、なくした十字架を蟹が拾い届けてくれたとか。蟹は海や川や水族館にいるものと思っていたが、宮崎では市街地で見かけることがある。ちょっとした水路や水田から出てくるのだろうか。この前は、教会の掃除をしていたら玄関のあたりを蟹がすばやく横切っていった。蟹の奇跡は特になかった。

著者略歴

大口玲子(おおぐち・りょうこ)

1969年東京都大田区生まれ。宮城県仙台市、石巻市を経て、現在は宮崎県宮崎市在住。1998年、「ナショナリズムの夕立」で第四十四回角川短歌賞受賞。
歌集に『海量ハイリャン』、『東北』、『ひたかみ』、『トリサンナイタ』、『桜の木にのぼる人』、『ザベリオ』、『自由』、歌文集に『セレクション歌人5 大口玲子集』『神のパズル』がある。「心の花」会員。宮崎日日新聞「宮日文芸」短歌欄選者。牧水・短歌甲子園審査員。

 

 

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バックナンバー

  • 12月4日:日曜の聖書朗読当番を忘れたる夢に蟹は走れる
  • 12月3日:風に心をひるがへしつつ宣教のために立ちたるいくつの港
  • 12月2日:国と国との約束を綴ぢし朱の封蝋に人の指先は見ゆ
  • 12月1日:五時半に起きて祈れる子を思ひ冬の朝の窓を開けたり

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