《一月五日》在る在らぬ不確かの我何ゆゑに歌はむとすやその歌や

私の詩への目覚めは新制中学一年生十三歳北九州東北端の海辺の町門司で。きっかけは同級生の先導で入部した文芸部にあった呉茂一訳の『ギリシア・ラテン詩集』のアルクマン断片。訳もわからず戦慄が走った。それから七十数年を経ても、詩歌は相も変わらぬ謎(=何ぞ)。

著者略歴

高橋睦郎(たかはし・むつお)

昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。 詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。 歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)

 

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バックナンバー

  • 1月7日:不確かの我確かむる或は言ふ我を鎮むるけだし鎮魂
  • 1月6日:何のため歌試むる不確かの我を確かと思ひ做すべく
  • 1月5日:在る在らぬ不確かの我何ゆゑに歌はむとすやその歌や何ぞ
  • 1月4日:我思ふゆゑに在るとふその思ふ疑へばうつつ我在りや無し
  • 1月3日:億兆の遺伝子こぞる船として我在るか我やむざね虚船
  • 1月2日:にひ年と日は改まり我が齢改まらずて直に増えゆく
  • 1月1日:昨日こそ髻髪なりしを八十あまり七のにひ年迎ふる我か

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