《一月七日》初風が未来のページくしゃくしゃに

新しい手帳はまっさらだ。ページをめくって、じっと見つめる。並んだ日付は、まだなにものでもない表情をしている。朝の光が机に落ちて、カップのコーヒーは冷めかけている。未来とは、輪郭をもたない白い影。えんぴつで、そっとなぞるみたいに、これからの時間を埋めていく。コーヒーカップを手にとる。白いページに小さな染みがひとつ、ついた。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 1月8日:独楽已みて虚数の軸に宿る影
  • 1月7日:初風が未来のページくしゃくしゃに
  • 1月6日:門松に旅路の砂が舞い残る
  • 1月5日:初芝居幕上がるたび別の街
  • 1月4日:初馬卡龍金箔舌尖摩天楼
  • 1月3日:獅子舞の影が煙草をふかしてる
  • 1月2日:初夢のポケットにある贋の鍵
  • 1月1日:初日の出瓦礫の街に風が吹く

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