《一月十四日》去年こぞの雪いまは何處の語を吐きし鈴木・日夏も雪ふる彼方

日本近代詩の夜明けは森鴎鷗外が主導した訳詩集『於母影』。つづくのが上田敏『海潮音』、永井荷風『珊瑚集』、堀口大學『月下の一群』、日夏耿之介、鈴木信太郎の訳業も外せない。フランソワ・ヴィヨンの「畴昔そのかみ美姫びきの歌」中の「去年こぞの雪いまいづこ」は鈴木の名訳で、日夏もほぼ踏襲。

著者略歴

高橋睦郎(たかはし・むつお)

昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。 詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。 歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)

 

無断転載・複製禁止

バックナンバー

  • 1月14日:去年の雪いまは何處の語を吐きし鈴木・日夏も雪ふる彼方
  • 1月13日:老人がうろつくによき陋巷といふが在りけり今は何處ぞ
  • 1月12日:よき衣を着なし庶民を見下して書かず戰後を長く生きたり
  • 1月11日:老ゆること眩しき世あり昭和なる永井荷風老・志賀直哉翁
  • 1月10日:磯に寄る和布拾ひつ山に生ふる野蒜摘みつつ我老いにけり
  • 1月9日:海やまのあひだの逗子に移り棲み三十八年忽ち過ぎぬ
  • 1月8日:あくがるる魂鎮めむと苦しめば家に在りつつ我は旅人
  • 1月7日:不確かの我確かむる或は言ふ我を鎮むるけだし鎮魂
  • 1月6日:何のため歌試むる不確かの我を確かと思ひ做すべく
  • 1月5日:在る在らぬ不確かの我何ゆゑに歌はむとすやその歌や何ぞ
  • 1月4日:我思ふゆゑに在るとふその思ふ疑へばうつつ我在りや無し
  • 1月3日:億兆の遺伝子こぞる船として我在るか我やむざね虚船
  • 1月2日:にひ年と日は改まり我が齢改まらずて直に増えゆく
  • 1月1日:昨日こそ髻髪なりしを八十あまり七のにひ年迎ふる我か

俳句結社紹介

Twitter