
《二月六日》春の蹄傾ぐ海より迫り上ぐる
これは抵抗じゃない。そう言い切ると、ほんとうに大事なことを見逃してしまう。わたしは文字を集めるのが好きなのだ。網で獲ったそれがどれだけ美しいことか。陽に透かせば、結ばれあった文字には、数えきれない人生が観察できる。ほんの一瞬、だれかの記憶がそこに浮かび、そしてまた風にさらわれていく。記憶というものが、こうしてどこかに流れていくのなら、わたしはせめて、それをそっとすくいあげてみたい。
無断転載・複製禁止
これは抵抗じゃない。そう言い切ると、ほんとうに大事なことを見逃してしまう。わたしは文字を集めるのが好きなのだ。網で獲ったそれがどれだけ美しいことか。陽に透かせば、結ばれあった文字には、数えきれない人生が観察できる。ほんの一瞬、だれかの記憶がそこに浮かび、そしてまた風にさらわれていく。記憶というものが、こうしてどこかに流れていくのなら、わたしはせめて、それをそっとすくいあげてみたい。
無断転載・複製禁止