《四月五日》馬酔木咲く儀礼の皿に日を沈め

夕方、ひとりで食べる冷めたシチューを皿に盛った。
特別でもないけど、今日は少しだけ丁寧によそってみた。
白い花が、ずっと窓の向こうで、なにかに間に合おうとしているみたいに揺れていた。
食べ終えた皿の曲面が、光をしずかにはね返していた。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

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  • 4月2日:蓴生う起爆せぬ語のピンを抜く
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