
《四月七日》桃ひらく古書の行間うっすら雨
戦後八十年という文字を目にした。
声にするより重たく感じた。机の上にのせた辞書みたいだった。持ち上げれば埃が舞いそうで、閉じたまま指先でなぞるしかないような重さ。
風土という言葉がふいに浮かぶ。たぶんそれは、声にならない沈黙の配置、置き去りにされる記念日の手触り、語られなかった記憶が、部屋の深部でまだ呼吸している──そんな名もなき気圧のことだ。
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戦後八十年という文字を目にした。
声にするより重たく感じた。机の上にのせた辞書みたいだった。持ち上げれば埃が舞いそうで、閉じたまま指先でなぞるしかないような重さ。
風土という言葉がふいに浮かぶ。たぶんそれは、声にならない沈黙の配置、置き去りにされる記念日の手触り、語られなかった記憶が、部屋の深部でまだ呼吸している──そんな名もなき気圧のことだ。
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