《四月十六日》醜しとひと思ひ醜しと思ふ我こそいや醜きを

自分の内なる醜さを見つめれば、他人の外なる醜さなど何ほどでも無いはずだ。

著者略歴

高橋睦郎(たかはし・むつお)

昭和12年12月15日、北九州八幡に生まれる。少年時代より詩、短歌、俳句、散文を併作。のち、新作能、狂言、淨瑠璃、オペラ臺本などを加へる傍ら、古典文藝、藝能の再見を続ける。 詩集『王国の構造』(藤村記念歴程賞)、句歌集『稽古飲食』(読売文学賞)、詩集『兎の庭』(高見順賞)、『旅の絵』(現代詩花椿賞)、『姉の島』(詩歌文学館賞)、『永遠まで』(現代詩人賞)、句集『十年』(蛇笏賞、俳句四季大賞)。 歌集に『道饗』、『爾比麻久良にひまくら』、『虚音集』、『待たな終末』、『狂はば如何に』など。 藝術院會員。2024年に文化勲章受章。 (Photo : Jorgen Axelvall)

 

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  • 4月16日:醜しと他を勿思ひ醜しと思ふ我こそ弥醜きを
  • 4月15日:愛憎の因を求めよ必ずや彼には無くて我にこそ在れ
  • 4月14日:過剰をばわが過誤とせよ思はずも過剰に愛し過剰に憎む
  • 4月13日:愛憎の起伏激しく生き来る一生と思ふ省みすれば
  • 4月12日:海昂り荒れやまぬ日を家ごもりつつしみをれど昂る心
  • 4月11日:海滅び波死なむ日や如何ならむそを思ひときに波昂るか
  • 4月10日:加齢その果てのわが死を思ほへば海にもやがて来む死滅の日
  • 4月9日:加齢その果てなるは死ぞ突然に心拍止まむ杖投げざまに
  • 4月8日:海拍に遅るまじとて杖を持つ己励まし打つ笞づゑ
  • 4月7日:海拍にわが心拍の遅るるを加齢と思へ加齢日に夕に
  • 4月6日:寄せ返す海の拍をば心拍と重ね生き来しわが四十とせか
  • 4月5日:寄せ返す汀に沿へるわが歩み三十とせを超え四十とせ近き
  • 4月4日:家出でて路を下ればそこに海飽きず寄せては返す穏波
  • 4月3日:海の辺ゆ海の辺へ帰り来し我か海への思ひ・怖れこもごも
  • 4月2日:文字が関なれば前なる狭き海も硯の海と呼び親しみき
  • 4月1日:字大里すなはち内裏大内を畏み大き里を当てしか

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