
《五月十六日》風薫る午後人類の棚を編む
まるで、走ってホームに飛び込んだものの、電車のドアが閉まりかけていたときのような、ほんの一歩。でも、その一歩は縮まらない。つまり、システムのほうが、こちらの動きにまったく関心をもっていない。それだけのこと。べつに事故でも失敗でもない。でも、自分の動きと世界の挙動が、かすかに噛み合わなかったとき、人の脳はそこに、いらぬ引っかかりを残すらしい。彼女の脳もまた、その引っかかりに囚われ、足踏みしていた。
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まるで、走ってホームに飛び込んだものの、電車のドアが閉まりかけていたときのような、ほんの一歩。でも、その一歩は縮まらない。つまり、システムのほうが、こちらの動きにまったく関心をもっていない。それだけのこと。べつに事故でも失敗でもない。でも、自分の動きと世界の挙動が、かすかに噛み合わなかったとき、人の脳はそこに、いらぬ引っかかりを残すらしい。彼女の脳もまた、その引っかかりに囚われ、足踏みしていた。
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