《七月五日》風死してウディ・アレンの茹でた豆

週に三度は、知らない人に道をきかれる。道だけじゃない。ふいに近づいてきては、いろんなことをたずねてくる。今日は図書館で本を抱えていたら、見知らぬ女の子が近づいてきて、「あの……この本が見つからなくて」と、書名をメモした紙を見せてきた。結局、いっしょに探すはめになった。いったいわたしは、どこまで「安全そう」に見える女なのだろうか。

著者略歴

小津夜景(おづ・やけい)

1973北海道生まれ。句集に『フワラーズ・カンフー』(第8回田中裕明賞)、『花と夜盗』。エッセイ集に『カモメの日の読書』『いつかたこぶねになる日』『ロゴスと巻貝』。そのほか、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者須藤岳史との往復書簡『なしのたわむれ 古典と古楽をめぐる手紙』。現在『すばる』で「空耳放浪記」連載中。

(ヘッダー写真:小津夜景)

 

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バックナンバー

  • 7月5日:風死してウディ・アレンの茹でた豆
  • 7月4日:フロイトの夢に蛾の影ひとつふえ
  • 7月3日:百足またボルヘスの書を這ふ夜かな
  • 7月2日:蚤を飼ふシェイクスピアの失恋記
  • 7月1日:打ち水や梁をくゆらし光の緒

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